こんにちは。
桐生です。
「出張手当は社会保険の対象外」
そういう話を聞いたことがある方は
多いかもしれません。
ですが…
実は、
この話を信じていた社長が、
年金事務所の調査で
2年前に遡って社会保険料を
請求されることになった
ケースがあります。
しかも、その金額は、
社長自身の分だけで約144万円、
社員4名の分を加えると、
約432万円となりました。
これ、社員が10名未満の会社の話です。
そんな会社にいきなり
こんな金額の請求がきたらと思うと…
笑えませんよね。
そこで今回は、
・なぜ、出張手当が調査で
社会保険の対象として判断されたのか?
そして、
・出張手当が社会保険の対象にならない
「制度の境界線」はどこにあるのか?
これらについてお伝えします。
今回の話は出張手当を
すでに支払っている会社にだけ
重要な話ではありません。
手当を支払っている会社であれば、
どんな会社にも関係する内容です。
ぜひ、今すぐに学んで
いってくださいね。
まず、重要なのが、
「出張手当は、
社会保険の対象外にもなるし、
社会保険の対象になることもある」
ということです。
つまり、
先の会社において
出張手当が社会保険の対象に
なったからといって、
「すべての出張手当が
社会保険の対象となる」
と考えるのは間違いです。
実際に、
年金事務所の調査においても、
堂々と説明したうえで、
「社会保険の対象外」
として認められるケースもあります。
では、なぜ、
先の会社の出張手当は
社会保険の対象と判断されて
しまったのか?
その原因について
見ていきましょう。
この会社では、
出張旅費規程もしっかりと整備して、
その規程に基づいて毎月しっかりと
支払もしていました。
そして、
平均的に社長が月20万円、
社員が月10万円の出張手当を
受け取っていました。
一見すると、
・規程や必要な書類も整っている
・出張という実態もある
・規定通りに精算もされている
ということで、
まったく問題ないように見えます。
ですが、一点だけ
問題がありました。
それは、
「出張手当を
“出張のご苦労さん代”
として支払っていた」
ということです。
実際、この社長は
年金事務所の調査で、
出張手当の内容について
質問された際に、
こう答えたそうです。
「出張って大変でしょ?
だから、出張に行ったら
ご苦労さん代として支払って
あげているのですよ。
この規程に金額も設定しています。」
社長がこの回答をした結果、
年金事務所は会社に対して、
「出張手当を社会保険の対象として、
社会保険料を再計算するように」
と指導をしました。
その理由は、
この会社における出張手当が
「労働の対価(対償)」と
判断されたからです。
多くの会社は、
調査の対策として、
「旅費規程があるか」
「本当に出張しているか」
までは確認するかもしれません。
ですが、
それだけでは足りないのです。
もう一つ見るべきなのが、
「その金銭は、
何に対して支払われているのか」
という手当の性質です。
形式。
実態。
そして、性質。
この3つを分けて見なければ、
どこまでが社会保険上の「報酬」で、
どこからが「報酬ではない」のか。
その制度の境界線は見えてこない
ということです。
では、ここからは、
「社会保険の対象外となる
出張手当とはどういうものか?」
についてお伝えします。
出張に伴う支払いを考えるときは、
大きく分けて二つの性質を見る必要が
あります。
1つは、先の事例にあった
「出張のご苦労さん代」です。
もう1つは、
「実費弁償」です。
先に結論から言うと、
後者の性質を持つ出張手当こそが、
「社会保険の対象外となる出張手当」
になります。
「実費弁償」とは、
会社が本来負担すべき業務上の費用を
本人がいったん立て替え、
その負担分を会社が戻すものです。
つまり、
「実費弁償」というものは、
「労働したことへの報酬」とは
根本的に性質が異なります。
そして、日本年金機構の取扱いでも、
「会社が負担すべき費用を従業員が立て替え、
その実費弁償を受ける場合は、
報酬等に該当しない」
と整理されています。
これらのことから、
出張手当が、
業務交通費や宿泊費の立替精算のように
「実費弁償」の性質を持つものであれば、
「労働の対償にはならない
=社会保険上の報酬にも該当しない」
ということになるわけです。
ここがポイントです。
社会保険の対象外になるのは、
「出張手当」という名前だから
ではありません。
その手当の性質が
「実費弁償」だからです。
ここを混同してはいけません。
規程を作った。
規程どおりに払った。
それだけで安全になるわけでは
ありません。
そもそも、その規程が
「何に対して金銭を支払う制度なのか?」
ここを間違えていたら、
正確に運用していたとしても
「会社防衛」になるどころか、
「間違っている処理をしていた証明」
にしかなりません。
桐生はいつも、
「形式だけではなく実態が重要」
ということをお伝えします。
ですが、
今回のようなケースでは、
形式と実態が伴っていたとしても、
「年金事務所の見る視点を間違えると、
大きなリスクが降りかかる」
ということがわかります。
もし、今回の話で不安になったのであれば、
まずは自社で以下を確認してみてください。
(1)社会保険の対象外としている手当はないか?
(2)その手当は、実質的に「労働の対償」として
支払われていないか?
(3)対象外としているなら、
「なぜ対象外なのか」を制度上説明できるか?
この3つです。
最後に。
経営者が見るべきなのは、
・規程があるか?
・実態があるか?
だけではありません。
「その支払いが制度上、
何として扱われるのか?」
ここまで見ることが重要です。
その視点を持たずに
「旅費規程を作れば大丈夫」
「この手当なら社会保険がかからない」
と覚えるのが一番危険です。
逆に、制度が
「なぜそれを報酬から外しているのか」
まで分かれば、
どこまでが対象で、
どこからが対象外なのか。
その境界が見えるようになります。
自分で判断できないという方については、
個別相談も受け付けていますので、
ご活用いただければと思います。
それでは、また。
桐生 将人

