こんにちは。
桐生です。
某議員が社会保険を
逃れていたことで問題になった
「国保逃れ」について、
・名ばかり役員パターン
・短時間正社員パターン
等など…
色んなパターンがあることが
明らかになってきました。
世間では、
こういったスキームを
提供する会社だけではなく、
スキームに手を出した
個人事業主にも批判の声が
あがっています。
ですが…
実際はここで大きなリスクを
背負っているのは、
「スキームの提供会社」ではなく
「個人事業主」にあります。
そして、そのリスクの大きさは、
本人にとって想定外のレベルかも
しれません。
そこで今回は、
なぜ、
「国保逃れ」をしている
個人事業主にリスクがあるのか?
そして、
「国保逃れ」をしていた
個人事業主の末路とは?
これらについてお伝えします。
今回の件は
個人事業主だけの話では
ありません。
社会保険料に悩んでいる
経営者であれば、
非常に重要な話になります。
というのも、
安易に「社保逃れ」に
手を出すことの
リスクの大きさを知ることが、
経営判断において
非常に重要だからです。
それでは、始めます。
そもそも、なぜ、
個人事業主は国保逃れに
手を出してしまうのか?
それは、
国民健康保険の保険料が
高いからです。
たとえば、
・所得300万円
・3人家族
・夫は45歳の個人事業主
・妻は45歳の専業主婦
・子は15歳の学生(収入なし)
・東京都千代田区在住
という個人事業主で試算してみると、
健康保険料は569,100円となりました。
つまり、月換算の健康保険料は、
約4.7万円になります。
さらに、国民年金保険料も
夫婦それぞれにかかりますので、
17,920円×2人分=35,840円が
毎月の支払に加算されます。
結果として、
所得300万円の個人事業主は、
月換算8.2万円もの社会保険料を
支払うことになるということです。
この負担が大きいので、
「国保逃れ」に手を出してしまう
ケースがあるわけです。
たとえば、
もし、この個人事業主が
「国保逃れスキーム」に手を出して、
最低等級で社会保険に加入すれば、
本人負担ベースで月の保険料は
約1.2万円になります。
そして、
扶養の要件等を満たせば、
家族分として別途保険料が
上乗せされることもありません。
さらにいえば、
夫は国民年金ではなく
厚生年金になるので、
将来の年金額も大きくなる
可能性があります。
目の前のコストが
月換算7万円も下がったうえに、
将来のメリットも大きくなる。
それなら手を出したくなる気持ちも
わからなくもないですよね。
ですが、
その状態を成立させる
法的要件を知らずに、
安易にこういったスキームに
手を出してしまうと、
想定していなかったリスクまで
背負うことになります。
ご存知の通り、
2026年3月に厚生労働省は、
「法人役員になった個人事業主について
社会保険の資格をどう判断するのか」
についての基準を改めて明確化しました。
具体的には、
形式上は役員だったとしても、
・法人に使用されている実態がない
・報酬が業務の対価として
経常的に支払われていない
というように、
役員としての実態がない場合は、
「被保険者の資格を有しない」
と整理されています。
さらに、
今回の「国保逃れ」であったような
「役員報酬を上回る会費等を
法人へ支払っている場合」
についても、
「原則として業務の対価としての
経常的な支払いとは認めない」
と明示されました。
つまり、
「法人の役員として
存在していること」と
「社会保険上で
被保険者として認められること」
が同じではないことが
改めて示されたということです。
ここが、
この問題の本質です。
一つの制度上で成立している
「役員」という状態が、
別の制度上の資格まで
保証してくれるわけではない
ということです。
では、もし、
過去に遡って社会保険の資格が
否定された場合どうなるか?
まずは、
過去の期間について、
本来加入すべきだった
国民健康保険や国民年金の負担が
改めて生じることになります。
たとえば、
もし、先の事例で2年前まで
遡及されたとすれば、
約8.2万円×24ヶ月=約196万円
というレベルの負担が生じるわけです。
さらに厄介なのが、
ここからです。
社会保険料は、
本人が国へ直接納付しているものでは
ありません。
会社が本人負担分を徴収して、
会社負担分と合わせて納付しています。
つまり資格が否定されたとき、
「国から本人へそのまま返ってくる」
という単純な構造ではありません。
ここには制度上のリスクだけでなく、
「提供法人からすでに支払った
社会保険料を回収できるのか」
という信用リスクまで乗ってきます。
これが安易に「国保逃れ」に手を出した
個人事業主の末路です。
ただし、
ここで重要なのは、
「国保逃れが悪い」
という単純な話ではありません。
「毎月7万円得している」
と思っていたものが、
「後からまとまった負担として
戻ってきてしまう構図」
に自分を置いてしまっていた
ということです。
経営者の中には、
目の前のコストが気になって、
安易に「社会保険逃れ」に
手を出してしまう方もいます。
ですが、
経営者が見るべきなのは、
「今月いくら安くなるか」
ではありません。
その状態を成立させる
法的要件は何なのか。
否定されたとき、
最大で何を失うのか。
そして、そのリスクに対して
得られるリターンは見合っているのか。
ここまで考えて初めて
「経営判断」だということです。
成立要件を理解しないまま、
大きなリスクを背負って
目の前のコストだけを減らすのか。
制度の境界を理解して、
リスクをコントロールしながら
合法的にコストを最適化するのか。
勝ち続ける経営者が
どちらを選ぶかは明白ですよね。
桐生 将人

