MENSAの思考

交渉の場で正直に答えると損する質問

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

個人が訴訟をする場合に、

高額な賠償金が支払われる

事例を挙げるとすれば、

何が思い浮かびますか?

 

たとえば、

「個人に障害を負わせた」

という場合はどうでしょう?

 

これは間違いなく賠償金額が

高くなりそうですよね。

 

そして、こういった賠償請求の

対象となるのは、科学メーカーや

病院と言えるでしょう。

 

そこでこういった業界が、

多額の賠償金額の支払いを防ぐ

ために「賠償金額の上限」を

設けようとしたとします。

 

さて、この結果、業界側は

本当に損害賠償額を低く抑える

ことができるのでしょうか?

 

これは、先日からお伝えしている

ダニエル・カーネマン氏が

自著の「ファスト&スロー」で

紹介している考えの1つです。

 

この答えは以下です。

 

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たとえば、上限を一〇〇万ドルに設定したとする。

こうすればたしかに、それ以上の賠償金を払うことは防げるが、本来ならもっと少額ですんだはずの賠償金まで押し上げることになりかねない。

―引用(No.3194):『ファスト&スロー上』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

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これはどういうことか?

 

それは、上限の”数字”を掲げることが、

「アンカリング」の効果を

発生させてしまうということです。

 

「アンカリング」はマーケティングや

心理学では有名な用語の1つです。

 

これは、何かの数値を見積もる前に、

特定の数値(アンカー)を示されると、

その後の数値の見積もりがアンカーの

数値の近くに留まるというものです。

 

一つ例を挙げます。

 

あなたが飲食店に行って、

「本日はスペシャルコースなので、

お支払いは、あなたの言い値で構いません」

と言われたとします(困りますね^^;)。

 

そして、お会計の前になって、

お店の方からこんなことを言われます。

 

「通常時の価格は1人5万円でコースを

提供しております」

 

こうなるとあなたはきっと、

5万円を基準にして「言い値」を

考えてしまうと思います。

 

では、もし、同じ状況で、

 

「通常時の価格は1人5000円でコースを

提供しております」

 

と言われた場合はどうでしょう?

 

きっと、あなたの頭に浮かんだ

「言い値」は前者のパターンより

低くなったと思います。

 

これは、「通常時の価格」が

アンカーになって、その後の

見積もりに影響を及ぼしたと

いう一例です。

 

さて、冒頭の事例に戻りましょう。

 

業界側は、損害賠償を抑えるために

賠償額の上限額として「一〇〇万ドル」

という数字を掲げたとします。

 

その結果、賠償額が青天井になるのは

防げます。

 

ですが、事前に”数字”を見せたことで、

アンカリングの効果を発生させてしまう

ことになります。

 

つまり、もっと低い金額(たとえば

一〇万ドル台)を想定していた人も、

このアンカーに引っ張られて、限り

なく一〇〇万ドルに近い金額を要求

するようになってしまう可能性がある

ということです。

 

このように、アンカリングは、

その効果を知っていれば、

有効活用もできるし、逆に、

致命的なダメージを受けかねない

諸刃の剣です。

 

では、この教訓からわかる

「交渉の場で正直に答えると

損する質問」とは何でしょうか?

 

それは、

払う側なら「上限値」

払われる側なら「下限値」

と言えるでしょう。

 

たとえば、あなたが何かを買うときに

「最大でいくらまで払えますか?」

という質問をされたとします。

 

そのときに、たとえば、

「100万円までならなんとか…」

と答えれば、100万円のアンカーが

打ち込まれたことになります。

 

その結果、もっと低い金額で済んだ

かもしれないものが、あなたの上限額

というアンカリングに引っ張られた

価格提示を受けることになるわけです。

 

逆に、あなたが何か売るときに、

「最低でもいくらになりますか?」

という質問をされたとします。

 

そのときに、たとえば、

「最低でも5万円は頂戴しないと…」

みたいな回答をしたとします。

 

すると、相手には5万円のアンカーが

打ち込まれてしまい、あなたの下限額

に引っ張られた価格を提示されること

になるわけです。

 

正直に答えたことで、自分にとって

損するアンカリングの効果を発生させ

てしまったということですね。

 

では、どうすればいいか?

 

その答えは簡単で、もし、

そういった質問をされたら、

答えないか、あるいは、アンカリング

の効果を逆手に取ってください。

 

たとえば、

買う側なら「上限値をかなり低く言う」

売る側なら「下限値をかなり高く言う」

ということです。

 

もちろん、それによって交渉自体が

成立しない可能性もありますが^^;

 

ちなみに、アンカリングは

文脈に相関性がなくても、

その効果を知っていて、

避けることに意識を向けて

いたとしても影響を受けて

しまうと言われています。

 

知識がある人ほど、

「自分は大丈夫」と思っている

ので、アンカリングにハマって

いることにすら気付けない

という実験結果もあります。

 

アンカリングについては、

どんなに知っていても、

「絶対に自分も影響を受けてしまう」

という考えを持っておきましょう。

 

桐生 将人

―参考:『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

 

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