こんにちは。
桐生です。
早速ですが、問題です。
ある経営者夫婦が今期の役員報酬を
「合計2,400万円」にすることを
決めました。
ただ、それぞれいくらずつの役員報酬に
するかを決めかねていました。
賢い夫婦は、
「どうせ同じお金を払うなら
なるべく手取りが多くなる
配分にしたい」
と考えたわけです。
さて、この夫婦が選択したのは
下記の4つのパターンのうち、
どの配分だったと思いますか?
————–
(1)夫2,300万円+妻100万円
→妻を扶養にするパターン
(2)夫1,800万円+妻600万円
→妻の所得税率10%におさえる
(3)夫1,500万円+妻900万円
→妻の所得税率20%におさえる
(4)夫1,200万円+妻1,200万円
→とりあえず半々にしてみる
————–
…
………
……………
実はこの話。
桐生がクライアントから
「”会社の経費に対する実際の手取り”
を最大化できる所得分散のバランス
(いわゆる「経費効率」が良いバランス)
をアドバイスして欲しい」
と言われて、試算したときの話です。
当初、桐生は感覚的に(1)が経費効率を
最大化できるのではないかと思いました。
というのも、(1)は唯一妻の社会保険料が
発生しないからです。
ですが、試算してみると、むしろ(1)が
一番経費効率が悪いことがわかりました。
その後に(2)と(3)を試算したところ、
分散の度合いを高めていくほど
結果的に経費効率が良くなることが
わかりました。
ちなみに、これは今回の個別ベースだけではなく、
生命保険料控除やふるさと納税のような変数を
除いた概算であっても同じ結果となりました。
では、最終的にどの配分が一番経費効率が
良かったのか?
もう大体の人は予想がつくとは思いますが、
経費効率が最も良かったのは(4)でした。
ちなみに、その後も
夫婦で3000万円取る人や
夫婦で4000万円取る人の
相談を受けたのですが、
どちらの場合も、
シンプルに半々にする方法が
変に差をつけるよりも経費効率が
良かったです。
(もちろん、累進課税の最大値を
突破してしまった場合は、
半々にしなくても変わらないかも
しれませんが、半々にすることで
経費効率が悪くなることはないです)
では、
「所得分散はとにかく半々にすればOK」
と単純に考えれば良いかというと…
それだけでは片手落ちです。
というのも、
経営者は「所得分散で節税」するために
“新たなコスト”を支払っているからです。
それが何かというと…
「社会保険料」です。
たとえば、先のケースでいうと、
(1)の場合、妻が扶養だったので
社会保険料はかかりませんでした。
ですが、(2)~(4)の場合は
違います。
以下の社会保険料が新たに発生する
ことになります。
———————–
(2)の場合は、年間約180万円
(3)の場合は、年間約249万円
(4)の場合は、年間約280万円
※令和7年3月時点の協会けんぽ(東京都、介護保険料あり)にて試算
※上記は会社負担・本人負担を合算した金額
———————–
所得分散をする際に、
この”新たに発生する社会保険料”のことを
見落としてしまうと、
経費効率を下げてしまうどころか、
逆にマイナスになってしまう可能性
すらあります。
これが「所得分散=節税」と考えている
経営者の「盲点」だということです。
では、どうすれば所得分散による
新たなコスト(=社会保険料)を
抑えることができるのか?
その一つの方法として、
「”給与の受取先”と”社会保険の加入先”
を分離する」
ということが考えられます。
たとえば、よくあるケースとして
こんな会社があります。
————-
社長の役員報酬:70万円
→社会保険料 年間約240万円
奥さまの役員報酬:30万円
→社会保険料 年間約107万円
※令和7年3月時点の協会けんぽ(東京都、介護保険料あり)にて試算
※上記は会社負担・本人負担を合算した金額
————-
社長は節税のために奥さまに30万円の
所得分散をしています。
ですが、その結果として、
「107万円」という新たなコストを
支払っているわけです。
これではいくら節税できたとしても
その効果は想像以上に低いものに
なってしまうかもしれません。
では、どういうことが考えられるか?
まずは、「形」だけで言えば、
以下のような方法が考えられます。
————-
社長の役員報酬:70万円
→社会保険料 年間約240万円
奥さまのパート給与:25万円
→社会保険料 年間約0万円
奥さまの役員報酬:5万円
→社会保険料 年間約27万円
※令和7年3月時点の協会けんぽ(東京都、介護保険料あり)にて試算
※上記は会社負担・本人負担を合算した金額
————-
現在は、
「”給与の受取先”と”社会保険の加入先”
が一致している状態」
でした。
それを、
・所得分散のために給与を受け取る会社
・社会保険を加入する会社
に分離したということです。
ここで重要なのは「実態」です。
もし、奥さまを役員にしている理由が
「節税のための所得分散」なのであれば、
「実際の勤務時間はほとんどない」という
ことも多々あります。
それであれば、役員を退任させて、
労働時間の短いパートスタッフとして
働いてもらえば社会保険を喪失できる
可能性があります。
社会保険を喪失すれば、
所得分散のための給与に対しては
社会保険料がかからなくなります。
ただし、日本は「国民皆保険」と言って、
どこかで社会保険に加入しなければ
ならないことになっています。
なので、社会保険を喪失する場合は、
別の場所(会社)で社会保険を加入する先を
探す必要があります。
選択肢はいくつかあります。
たとえば、以下のようなものです。
————
(1)国民年金と国民健康保険に加入する
(2)週20時間だけ別の会社でパート勤務を
して社会保険に加入する
(3)別会社を設立して実態としても役員を
してもらう
————
(1)は正攻法です。
普通に役所に行って手続きするだけです。
ただ、この方法だと国民健康保険が高額になる
こともあるので、せっかく社会保険を喪失した
意味が薄れてしまう場合もあります。
(2)も正攻法です。
どこかの会社で社会保険に入れる最低限の
時間を働くことで、社会保険を確保します。
家計の外からの収入も得られるので、
結果的に家計の手取り最大化に繋がるとも
言えます。
(3)は少しテクニカルな方法です。
所得分散目的で給与を支払っている会社とは
別の会社を設立して、奥さまに代表取締役や
取締役といった役員に就任してもらいます。
オーナー企業であれば役員報酬の金額は
自分で決められますので、結果的に経費効率を
最大化しやすいと言えます。
ただし、(3)に関しては、
“奥さまが役員として実際にその事業に取り組む”
といった実態があることが大前提です。
そこに何の実態もなければ、
最近ニュース等で騒がれていた
某政党の元議員のように
「国保逃れの脱法スキーム」
と言われかねません。
結局のところ、
こういった「形」が適正に活用できるかどうかは
その会社の事業や形態等によって
ケースバイケースになってきます。
それでもこういった「形」すら知らなければ、
自社にあてはまるかどうかを判断することすら
できませんからね。
今後もMENSA社労士として
「社会保険や税金に関する
少し変わった見方」
を情報提供していきますので
楽しみにしていてくださいね。
桐生 将人
