マーケティング

利益率80%の商品開発法

※本ブログは桐生が過去にメルマガで配信した

内容を再編集して投稿しております。

 

こんにちは。

桐生です。

 

キーエンスと言えば、

利益率の高さが有名ですよね。

 

詳しくは知らなかったのですが、

「2018年~2024年において

営業利益率が50%を一度も

下回っていない」

らしいです。

 

ネットで検索してみると、

全産業の営業利益率の平均値は

3.2%ということですから、

とんでもない利益率です^^;

 

しかも、驚くべきところは、

キーエンスが「IT企業」のような

利益率を高くしやすい業種ではなく、

「電子機器メーカー」であるという

ことです。

 

日本で有名な電子機器メーカーといえば、

ソニー、日立、キャノン等がありますが、

営業利益率は7%~14%程度とのこと。

 

つまり、同業種と比べても

すごい利益率だとわかります。

 

では、なぜそんな利益率を達成する

ことができるのか?

 

その秘密の1つは、

「商品の利益率が80%以上である」

ということです。

 

利益率80%なんて相当な暴利にも

見えますが…^^;

 

ただ、もし、それが単なる

ボッタクリだと思われていれば、

すでにこの会社は存在していない

はずです。

 

キーエンスが生き残っているどころか

むしろ、営業利益50%を保ち続けて

いることを鑑みれば、

「利益率80%以上の商品によって

お客さまに満足してもらっている」

ということがわかります。

 

では、どうすればそんな商品を

開発することができるのか?

 

今回はその商品開発の秘密を

ご紹介します。

 

きっと、あなたの商品やサービスの

利益率をアップするヒントにもなると

思います。

 

ぜひ、学んでいってくださいね。

 

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1.商品開発の発想の順序の違い

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もし、あなたが上司から

「今よりも利益を取れる

パソコンを開発してください」

と言われたらどう考えますか?

 

まずは、今の市場における売価と

原価を調査して、一般的な利益を

割り出します。

 

いわゆる現状分析です。

 

そのうえで、目標利益を達成するために、

売価を市場よりも高い金額にして、

その売価で売ることができる商品を

発想していきます。

(あるいは、より原価を下げるための

商品を発想していくことも考えられます)

 

…どうでしょう?

 

多くの人はこのような流れで考えて

いくのではないかと思います。

 

ですが、キーエンスは違います。

 

以下がキーエンスの商品開発の順序です。

 

(1)最初に売価を考える

(2)いくらで作れるか(原価)をイメージする

(3)売価に占める利益の割合が80%以上になるかを確かめる

(4)利益率が80%を確保できなければ、(1)に戻る

 

ある意味、シンプルですよね。

 

ここで最も重要なのは(1)です。

 

先の事例では、既存の商品を参考にして

売価を決定しようとしました。

 

ですが、キーエンスは売価を考えるとき、

「高くても買う人が多いような

役立ち度の高い用途を探す」

ということをします。

 

それは、「役立ち度の高さ」が高いほど、

高い金額で売ることができるからです。

 

つまり、既存の椅子の価格にとらわれず、

「役立ち度の高さ」で売価を考えるという

ことです。

 

ちなみに(3)と(4)からもわかる通り、

キーエンスでは、そもそも「利益率80%」が

商品開発の条件になっているとのことです。

 

すごい徹底っぷりですよね^^;

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2.お客さまの払っても良い最大金額を考える

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1では、キーエンスが商品開発において

「まず、売価を決める」ということを

お伝えしました。

 

では、実際にどうやって売価を考えるのか?

 

そこで重要になるのが、

「お客さまのお困りごとの大きさ」

という要素です。

 

たとえば、役立ち度の高い商品として、

「落としても壊れにくいパソコン」

というものを考えたとします。

 

次にすることは、

「その商品がお客さまのどういった

お困りごとを解決するのか?」

を想像することです。

 

たとえば、パソコンを落として

画面の調子が悪くなったとして…

 

・まずは電源を抜き差ししたり、

説明書を読んだりして格闘する

 

・それでも直らないので、コールセンターに

電話をしたら、「大変混雑しています」という

機械音声とともに保留音を聞き続けるハメになる

 

・最終的に修理を出そうと思ったら、

精密機器なので面倒な梱包を強いられる

 

・面倒ばかりかかったのに、

修理の代金は当然払わなければならない

 

・修理されてようやく戻ってきたと思ったら

通常の使用状態に戻すために色々と設定を

しなければならない

 

といったことを想像したとしましょう。

 

ここで、上記のお困りごとに

値付けをしてみます。

 

たとえば、

・修理費用が3万円

・かかった時間が8時間

・月給40万円、20日勤務想定

だとすれば、

お困りごと=3万円+2万円=5万円

と考えるということです。

 

これらのことからわかるのは、

「落下に強いパソコン」であれば、

お客さまは通常価格に加えて、

最大5万円を追加で払ってくれるかも

しれないということです。

 

このようにして、キーエンスは、

「売価=通常価格+お客さまのお困りごとの大きさ」

という方程式で売価を決定していくわけです。

 

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3.原価は値切らず、見切る

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売価の決定方法はわかりましたが、

それだけでは利益を最大化することは

できません。

 

利益をあげるためには、

売価を上げることだけではなく、

原価を下げることも同時に

考えなくてはならないからです。

 

では、原価を下げるためには

どうすれば良いか?

 

単純に思い浮かぶのは、

仕入先に対して、

「なんとか安くしてくれ!」

とお願いすることかも

しれません。

 

ですが、それでは限界があります。

 

ちなみに、キーエンスは

自社工場を持たずに、

商品の製造を外注しています。

 

なので、もし、外注先に

無茶な値引きを要求し続ければ、

そのうち見向きもされなくなって

しまうかもしれません。

 

そういうこともあって、

キーエンスは、

「単純な値切り」ということは

しないようです。

 

ではどうするかというと、

「見切る」ということです。

 

先ほどの事例で取り上げた

「落下に強いパソコン」を

開発するとします。

 

ここで重要なのがフォーカスです。

 

落下に強いと言っても、

「どの程度の落下か」によって

まったく原価は変わります。

 

10mの高さから落としても壊れないのか、

それとも1mの高さで壊れなければ良いのか…

 

どこにフォーカスをあてるかによって

素材や剛性がまったく変わるはずです。

 

そこでキーエンスがすることが

市場調査です。

 

たとえば、

・机からの落下(1m程度、床材)

・オフィスで歩行中の落下(1.5m程度、床材)

・屋外での落下(1.5m程度、コンクリ)

ということを想定して、

市場調査を行います。

 

その結果、ニーズが、

・机からの落下(1m程度、床材)…80%

・オフィスで歩行中の落下(1.5m程度、床材)…15%

・屋外での落下(1.5m程度、コンクリ)…5%

だとします。

 

この場合、キーエンスは、

80%のところにだけフォーカスをあてて、

残りの20%のニーズは見切ります。

 

これが原価を引き下げる秘密です。

 

多くの企業は、スペックを盛り盛りにする

ことによってコストが上がるわけですが、

キーエンスはこういった「見切り」によって

コストカットを図っているということです。

 

1~3をまとめると、

キーエンスが「利益率80%の商品」を

生み続けられる秘密とは、

・お困りごとを見つけて、売価を最大化する

・見切りでコストを削減し、原価を最小化する

ということでした。

 

当たり前といえば当たり前かも

しれませんが、意外とこういった

発想の順序をしていない方は

多いかもしれません。

 

まずは発想の順序を変えることから

始めると思いも寄らないサービスを

思いつくかもしれませんよ^^

 

桐生 将人

 

―参考図書:『キーエンス流 性弱説経営 人は善でも悪でもなく弱いものだと考えてみる』著:高杉 康成、出版:日経BP (2024/12/6)