MENSAの思考

カウンセリングは意味がないのかもしれない

※本ブログは桐生が過去にメルマガで配信した

内容を再編集して投稿しております。

 

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

なんだか先日から引き続き、

”意味がないシリーズ”が続いています^^;

 

「叱っても誉めても意味がない」

「自己啓発本は意味がない」

 

…うむむ、、、残酷な話です。

 

さて、そんなこんなで、

今回はその第3弾として、

「カウンセリングは意味がない

(かもしれない)」

という話です。

 

これもやっぱり、最近読んでいる

『ファスト&スロー』からの学びの

共有です。

 

まずは具体的な内容から紹介します。

 

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<以下、意訳・抜粋>

・専門のカウンセラーが新入生と

面談して、1年次終了時の成績を

予測する実験を行った

・カウンセラーは一人ひとりと

45分間面談し、高校の成績、

適性テストの結果、4ページにも

わたる自己申告書のチェックをした

・それと比較対象となる統計的

アルゴリズムには、高校時代の

成績と適性テスト1種類の結果だけ

を活用した

・それにもかかわらず、カウンセラー

14名のうち11名の予測は統計的

アルゴリズムを下回った

・仮釈放規定の運用違反、パイロット

訓練の成績、再犯の予測についても、

おおむね同様の結果が出た

 

―引用(No.5439)『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

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当然ですが、この結果は、

業界にショックを与えて、

論争が巻き起こったそうです。

 

結果、200以上の調査が行われて

いるそうですが、60%はアルゴリズム

が勝ち、40%は引き分けとなっている

ということです。

 

とはいえ、アルゴリズムの方が、

情報も少なく、時間もかからず、

人件費もかからないことを考えれば、

「引き分け=アルゴリズムの勝ち」

と言っても過言ではありません。

 

では、なぜ、専門家はアルゴリズムに

負けてしまうのか?

 

そのポイントとして2つの要因が

挙げられています。

 

1つ目の要因は、

「専門家が自分を賢くみせようとして、

めったにないような要因を複雑に組み

合わせて予測を立ててしまう」

ということです。

 

わかりやすくするために、まずは、

具体的な話を紹介します。

※参考図書から一部抜粋。

 

専門家とアルゴリズムが、

「ある人物が今晩映画に行くかどうか」

を予測する勝負をしたとします。

 

この場合、アルゴリズムはそれを

予測する式に基づいて判断します。

 

ですが、

専門家は、そういった式に加えて、

「もしかしたら骨折して映画に

行けなくなるかもしれない」

といった、めったにないような

事象を考慮したり、

「そういえば、彼は最近整体に

行っているから実は腰を痛めて

いて映画には行かないかも」

といった推測を加えて複雑に

判断しようとするということです。

 

ですが、めったにない骨折を

判断に入れれば、当然ながら、

的中率は下がることになります。

 

さらには、こんな実験もありました。

 

「(アルゴリズムの方が良い

成績が出せることがわかった

うえで)その式を専門家に

そっくりそのまま教えて、

予測をしてもらうことにした。

しかし、専門家は、自分の判断の

方が正しいと考えて、その式を

使うことを放棄した。

結果として、専門家は大体が失敗

して、アルゴリズムよりも下回る

予測をすることになった。」

 

…なんとも皮肉な話です。

 

2つ目の要因は、

「複雑な情報を取りまとめると、

人は一貫性を欠いてしまう」

ということです。

 

これは、簡単に言うと、

人間は同じことの判断でも、

二度評価すると、違う評価を

下すことが頻繁に起きる

ということです。

 

たとえばこんな事例が紹介されています。

 

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<以下、意訳・抜粋>

・放射線技師は、同じX線写真を別の機会

に見せられると20%の確率で「正常」と

「異常」の判断が入れ替わる

・101人の独立監査人に内部監査をして

もらった場合の結果も同じだった

・病理学者、心理学者などの専門職を

対象とした41種類の別々の調査でも

一貫性を欠く判断が認められた

・数分以内の再評価ですら、前回と

違う評価を下す例もあった

 

―引用(No.5490-5498)『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

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つまり、人はそのとき見ている

世界や環境によって簡単に評価

を変えてしまうということです。

 

たとえば、有名な話では、

昼食を食べる前と後では、

仮釈放の決定率に違いが出る

(昼食を食べた後は決定されやすい)

という話があります。

 

さらには、以前にもお話しましたが、

人は、過去の評価を過小評価すると

いう傾向もあります。

 

その結果、専門家は、自分が過去と

違う判断をしていることに対して

大して気にすることなく、コロコロ

と違った判断をしてしまうという

ことです。

 

このように、その時々の環境で

判断が左右されてしまい、過去

の決定も一貫しないようでは、

将来の妥当な予測ができるわけ

もないですよね。

 

ということで、

著書『ファスト&スロー』における

結論(というよりも、著書で紹介

されているポール・ミールという

心理学者の結論)は、

「将来の予測における最終決定は、

専門家よりも計算式にまかせる

ほうがよい」

というものでした。

 

いやはや、なんとも残酷です。

 

ただ、冒頭で、

「カウンセリングは意味がない

(かもしれない)」

と書いたように、カウンセラー

の生きる道もあります。

 

というのも、

カウンセラーに関しては、

長期の予測はアルゴリズムに

負けていますが、短期の予測

に関してはアルゴリズムに

勝つケースや高い的中率を

出すことがあるということが

認められているからです。

 

つまり、カウンセラーにも、

「短期予測」という活躍する

ステージが残されているという

ことです。

 

そして、ここからわかるのは、

専門家にとって重要なのは、

「自分の戦うステージをしっかり

と見極める」ということだと

言えます。

 

たとえば、

予測が可能な短期間において、

繰り返しカウンセリングを行う

といった、自分の強い分野に

特化する方法や

短期予測はカウンセラーが担当し、

長期予測はアルゴリズムを使い

ながら、軌道修正していくという

ハイブリッドな方法が

有効だと考えられます。

 

現在も「AIに仕事が奪われる」

と言われている時代ですが、

まさに同じことが言えますよね。

 

要は、

AIが苦手な分野に特化する、

あるいは、

AIが得意な分野では、AIを

利用して、AIが苦手な分野

は自分の能力を活かすという

ハイブリッドな働き方が、

今後の専門家の生きる道と

言えるわけです。

 

専門家として突き抜けるか、

ハイブリッドな専門家として

活躍するか…

 

少なくとも「普通の専門家」では

生き残れない時代ってことかも

しれませんね。

 

桐生 将人

 

参考図書:『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

 

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