MENSAの思考

大体の”意外な発見”は少数の法則によるもの

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

いきなりですが、以下の話を

一緒に考えてみてください。

 

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アメリカの3141の郡で腎臓ガンの

出現率を調べたところ、顕著な

パターンが発見された。

出現率が低い郡の大半は、中西部、

南部、西部の農村部にあり、人口

密度が低く、伝統的に共和党の

地盤である。

 

上記について、あなたの見解を

述べてください。

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これを読んでいるあなたは

おそらく日本人ですから、

アメリカの南部とか西部とか

はよくわからないと思います。

 

そして、病気と共和党について

の相関性もよくわからないでしょう。

 

結果、多くの人は、

・農村部

・人口密度が低い

ということと

「腎臓ガンの出現率が低い」

ということに相関性がある

と判断して、見解を述べた

のではないかと思います。

 

たとえば、こんな感じです。

 

・農村部は、都会と違って、

水もキレイで無農薬の野菜も

手に入りやすい。

脂っこいものを食べる習慣もない。

さらには、農業によって定期的

な運動もしている。

結果として、腎臓ガンになりにくい。

・人口密度が低いので、

大気汚染にもなりにくく、

人付き合いも少ないので、

深夜まで飲み会の付き合いをする

ということもない。

結果として、健康的な生活となり、

腎臓ガンになりにくい。

 

これ、かなり納得感がありますよね。

 

では、もう1つ。

 

今度は腎臓ガンの出現率が高い郡に

ついても考えてみましょう。

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腎臓ガンの出現率の高い郡の

大半は、アメリカの中西部、

南部、西部の農村部にあり、

人口密度が低く、伝統的に

共和党の地盤である。

上記について、あなたの見解を

述べてください。

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これを聞くと、今度は以下のように

考えるかもしれません。

 

・農村部は、貧しい環境で医療体制が

整っていないので、健康管理が

しっかりできていないから腎臓ガン

になりやすい。

・人口密度が低い分、人付き合いを

大切にしていて、飲み会とかは

かなり遅い時間にまで及ぶ。

タバコを吸っている人の数も多い

ので、健康を害しやすい。

 

うん…。わからなくもないですよね。

 

さて、この2つの話から

わかったのは何か?

 

それは、

腎臓ガンの発生率が高い郡の大半も、

腎臓ガンの発生率が低い郡の大半も、

両方とも、アメリカの中西部、南部、

西部の農村部にあり、人口密度が低く、

伝統的に共和党の地盤にあったという

ことです。

 

ですが、この両方の事実を知る前は、

きっとあなたも必死にそれっぽい理屈

を考えていたのではないかと思います。

 

ただ、その理屈はまったく本来の

原因をとらえていなかったわけです。

では、今回の腎臓ガン出現率が

高くなったり、低くなったりした

原因は何だったのか?

 

それは、

「人口が少なかったから」

です。

 

これは簡単な話です。

 

男性と女性がジャンケンをして、

男性が勝ったとします。

 

そして、これを見て、

「そうか!江戸時代においては、

男尊女卑の考えがあったから、

そのDNAによって、男性と女性が

勝負をすると男性が必ず勝つと

いうことなのだ!」

と考えたとします。

 

これを聞いたら、あなたは、

「いやそれは極論すぎでしょ…」

と思いますよね。

 

なぜなら、あなたは、

ジャンケンが勝つか負けるかは

1/2であって、何度もジャンケン

を繰り返せば、大数の法則が

働いて、限りなく1/2に近付く

ということを知っているからです。

 

ただ、それと同時にわかるのは、

「試行回数が少なければ、

極端な結果が出る」ということです。

(これを「少数の法則」といいます)

 

この少数の法則の問題は、

サンプル数が少ないことに

よって生じます。

 

ですから、単純に十分なサンプル

数を確保すれば良いわけですが、

これが簡単ではありません。

 

たとえば、ジャンケンのように、

本来の結果がわかっている場合は

その結果が出るまでの十分な試行

をすればいいわけです。

 

たとえば、今回のジャンケンを

1000回繰り返したとします。

 

そのときに、男性が70%勝った

としましょう。

 

それを見て、1000回試行した結果、

男性が多く勝つことがわかったと

言われたとしてもあなたはやはり

勘違いをしません。

 

「1000回ではちゃんと調査が

できていない。10000回くらいは

やらないと。」

 

と指摘することができます。

 

これは「1/2という結果になる」

という正解がわかっているからです。

ただ、今回のように、アメリカの

腎臓ガン出現率になると正解が

わかっていません。

 

そうなると、十分なサンプル数

というものも判断できません。

 

判断できないわけですから、

あなたの脳は、人口の数字を

無視してしまい、少数の法則が

働いているということにすら

気付かないわけです。

 

その結果、極端な事例が出て

しまっている郡を見て、その

結果の根拠を後付けで考えて

しまうのです。

 

これは、無意識的な脳が、

数字が苦手であり、原因と

結果を仕立て上げるのが

得意であることによって

起こってしまうものです。

 

今回のケースでも、

細かい数字を気にすることなく、

(明示されていないから無視した

という反論もあるかもしれませんが)

あなたの脳は、それっぽい原因と

結果を仕立てと思います。

 

ですが、真実はまったく

違うところにあったわけです。

 

ということで、今回の話は、

「意外な発見」の多くは、

単に少数の法則によるばらつきに

よって生まれている可能性がある

という話でした。

 

夢のない話かもしれませんが、

本来の原因とは違う原因を

信じて行動しても得たい結果は

得られませんからね。

 

もし、あなたが、得たい結果の

ために原因を突き止める合理的な

人間ならば、この事実から逃げては

ならないということです。

 

そして、

「意外な発見」に触れたときこそ、

舞い上がって信じるよりもまず、

「これは少数の法則が働いている

だけではないか?」

と一度冷静に考えてみるべきだ

ということです。

 

それっぽい話をするよりも、

真実を見つめていきましょう^^

 

桐生 将人

―参考:『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

 

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