マーケティング

マーケティングにおける”数字神話”のウソ

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

マーケティングを少し勉強したことが

ある人なら「数字を書くこと」の大切さ

について、耳にタコができるほど聞いて

いるのではないかと思います。

 

たとえば、

 

・売上がアップしました!ではなく、

「たった1年で売上が152%アップしました」

・顧客数が増えました!ではなく、

「顧客数がわずか90日で42社増えました」

というように”数字を詳しく書くべし”

 

ってことです。

 

要は、こういう数字を書くだけで、

マーケティングの結果が劇的に変わる

という”数字神話”のようなものが

あるわけです。

 

ですが、、、

 

もし、モノを売る以前に

「まったく注目されていない段階」

であれば、この”数字”はほとんど

意味がありません。

 

なぜなら、人間が普段使っている

「無意識な脳」は数字をほとんど

無視しているからです。

 

先日からお伝えしている

著名な心理学者である

ダニエル・カーネマン氏の代表作

「ファスト&スロー」の中から

1つの実験を紹介します。

 

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<以下、意訳・抜粋>

・大規模な原油流出事故の訴訟を

機に行われた実験があった

・それは、海鳥保護のために設置

するオイルフェンスの寄付を募る

というもの

・3グループに分けられた人に、

それぞれ、2000羽、2万羽、20万羽を

救うためにいくら寄付するかを

表明してもらった

・経済的に考えれば、2万羽よりも

20万羽を救う方が価値が高く、

2000羽よりも2万羽を救う方が

価値が高くなる

・だが、平均寄付額の結果は、

80ドル、78ドル、88ドルとなり、

救える数と寄付の額には

相関関係はなかった

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ダニエル・カーネマン氏は、

この結果から以下のような

ことを述べています。

 

「参加者が反応したのは、

無力な海鳥の羽に重油が絡みつき、

溺れ死ぬイメージである。

こうした感情的な文脈では

数がほぼ完全に無視される

ことは繰り返し確認されている。」

 

つまり、どういうことかというと、

人の無意識的な脳を動かすのは、

“数字”ではなく、”イメージ”である

ということです。

 

以前もお伝えしましたが、

人間は、普段、無意識的な脳を

使っていて、ほとんど意識的な

脳は使われません。

 

だから、まだ何も注目していない

状態であれば、どんなに数字で

アピールされても、そんなものは

まったく頭に入ってこないという

ことです。

 

つまり、マーケティングにおいて、

とにかく数字を書けばいいという

“数字神話”を説く人がいるなら、

それは疑った方が良いということです。

 

では、どうすればいいか?

 

それは、まず、注目されるために、

“数字”ではなく、相手の感情を動かす

ような”イメージ”をアピールすれば

良いということです。

 

たとえば、

YouTubeなんかでいえば、

「独立1年で年収3000万円稼ぎました」

というよりも、

「フェラーリ買いました」

みたいな動画の方が、

目を引くわけです。

 

どちらも「お金を稼いでいる」

ということをアピールしている

わけですが、フェラーリの方が

お金を稼いで高級車を乗り回している

お金持ち像をイメージしやすいです。

 

そして、脳が注目し始めると、

今度は「どれくらい稼げばそんな

車を買えるのだろうか?」といった

ことを考え始めます。

 

つまり、”数字”を判断する意識的な脳

が登場してくるわけです。

 

ここからが”数字”の力が通用し始める

段階だということですね。

ということで、まとめます。

 

マーケティングにおいて、

とにかく”数字”を書けばいいと

考える人は多いですが、それは、

あくまで注目された後の話だと

いうことです。

 

“数字”を並べたてても、無意識的な

脳が無視すれば、”数字”を判断して

くれる意識的な脳が出てくる機会も

ありません。

 

重要なのは、まずは”イメージ”。

 

“数字”はあくまでその後だと

いうことですね。

 

桐生 将人

―参考:『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』著:ダニエル・カーネマン、出版:早川書房 (2014/6/20)

 

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