人事労務

痴漢で捕まった社員は解雇できない

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

世の男性からすると、

「痴漢」って怖いですよね…。

 

あ、「痴漢冤罪」のことですが。

 

本当に「痴漢」するやつは

サイテーです。

 

では、あなたの会社の社員が、

そんなサイテーな「痴漢」を

して捕まったらどうしますか?

 

略式起訴によって前科がついたら

どうしましょう?

 

多くの経営者は、

「解雇する」

と答えるかもしれません。

 

だって、犯罪を犯したわけですからね。

 

「能力不足」とか「会社に合わない」

とかそういう話とはわけが違います。

 

ですが、これ…結構危険です。

 

実は、判例において、

 

・社員が衣服の上から痴漢行為を行った

・その後略式起訴で前科がついた

・会社は解雇(諭旨解雇)をした

・社員は会社を不当解雇で訴えた

 

というものがあります。

 

この結果どうなったと思いますか?

 

会社側が「不当解雇」で負けたのです。

 

裁判所が、

「痴漢による罪は重大だが、

解雇は重すぎる」

と判断したということです。

 

ちなみにこの話では、

複数の要素が関係しています。

 

ただ、すべてを話すと

めちゃくちゃ長くなるので、、、

 

その中でもあまり知られていない

ことを1つだけ紹介しておきます。

 

それは「痴漢」の罪には、

・迷惑防止条例違反

・強制わいせつ罪

 

の2つがあるということです。

 

つまり、条例違反なのか

刑罰なのかという違いです。

 

当然ながら、罰則の重さも

全然違いまして、

前者は、「6ヶ月以下の懲役

または50万円以下の罰金」で、

後者になると、「懲役6ヶ月

以上10年以下の懲役」です。

 

このどちらに該当するかで、

会社としての解雇の有効性も

変わるということです。

 

先の事例では、迷惑防止条例違反

であったために、諭旨解雇の懲戒

では重すぎると判断されたわけです。

(もちろん1つの要素ですが…)

 

ちなみに、「痴漢」で解雇が

認められた事例ももちろんあります。

 

その事例は、

・過去に痴漢で3回捕まっていて、

・解雇のきっかけとなった問題行為の

半年前にも捕まって罰金刑を受けていて、

・その際にも会社の懲戒処分を受けていたのに、

改悛をすることがなく、

・今回の問題行為については、懲役4ヶ月

執行猶予3年の刑が下された

というものでした。

 

…重いですよね?

 

ですが、逆に言うと、「痴漢」で

解雇ができるレベルとはこのレベル

だということです。

 

「痴漢だから解雇!」なんて

軽く考えていると痛い目に合うのは

会社の方です。

 

納得行かないと思いますが、

知識として覚えておいてくださいね。

 

桐生 将人

 

参考図書:『労務管理は負け裁判に学べ!2(著:堀下 和紀, 望月 建吾, 渡邉 直貴, 浅野 英之)』出版:労働新聞社 (2018/10/22)

 

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