こんにちは。
桐生です。
「社会保険逃れなのに、
取り締まれないです…」
先日、こんな相談を受けました。
守秘義務があるので
詳細はお話できませんが、
こんな話です。
—————
・大手のメーカー会社が
営業代行の代理店に対して
社会保険の適正加入を
させたいと考えた
・社会保険に加入していない
スタッフがいる代理店を
ピックアップして調査を実施した
・蓋を開けてみると、
社会保険に加入していない
スタッフの出勤状況は
「週20時間未満」となっていたので、
社会保険逃れとは言えなかった
—————
これだけ見ると
何も問題のない内容に
見えるかもしれません。
では、なぜ、冒頭の質問を
されたのかというと、
メーカー側の会社が
「事実は週20時間未満ではない」
と考えていたからです。
『週20時間以上働いているのに、
週20時間未満の出勤簿を作っているって
ブラックすぎでは?』
と思うかもしれません。
ですが、実はここで起きていることは
ちょっと違いました。
よくよく聞いてみると、
「スタッフ側が社会保険に入りたくないから
週20時間未満の出勤簿を出している」
ということだそうです。
ここで問題になっている会社の特徴は、
・完全成果報酬に近い歩合給
・働く時間も場所も縛っていない
というもので、労働時間に関係なく
報酬は決定されていました。
なので、スタッフ側からすると
「出勤簿なんてどうでもいい」
と思っていたわけです。
さらに、
「とにかく手取りを多くしたい」
という考えのスタッフが多かったので、
「社会保険に加入したくない」
というニーズもあったようです。
というのも、
社会保険はスタッフも会社も
約15%ずつかかることになります。
逆を言えば、
社会保険料がかからなければ
スタッフの手取りは15%アップし、
会社側にかかるコストも15%ダウン
することになります。
つまり、
・会社側は社会保険料負担を避けられる
・スタッフは手取りを最大化できる
という”利害一致の状況”が
生まれていたわけです。
結果として、
「会社はスタッフの本当の出勤状況に
目をつむって、
スタッフ側は週20時間未満の出勤簿を
提出して社会保険を逃れる」
という共犯のような関係が
成立してしまったということです。
では、こういったときに
どうやって社会保険逃れを
取り締まれるかというと…
正直、かなり難しいです。
というのも、
社会保険の加入要件は
・労働日数
・労働時間
で決まります。
つまり、どれだけ給与が高くても、
労働日数が極端に少なかったり、
労働時間がほとんどなければ、
加入要件を満たさないことになります。
年金事務所の調査においても、
社会保険逃れかどうかは
「出勤簿」によって判断されます。
この「出勤簿」をスタッフ側が
操作してしまったとしたら、
正直、普通の調査で社会保険逃れを
摘発するのは難しいです。
もし、こういった会社を取り締まるなら、
税務調査で現金商売のお店に内偵して
事実を暴くように、そのスタッフを
尾行して実際の労働時間を把握しないと
いけないことになります。
ただ、そういった場合でも、
工場勤務や店舗勤務のように
明確に労働時間が計測できる
仕事なら良いですが、
今回のケースのように
時間や場所を縛られない
営業職的な仕事になると
「どこまでが労働で
どこまでが労働時間外か」
を客観的に判断するのは
非常に難しくなります。
結果として、
・時間や場所に縛られない働き方
・完全成果報酬に近い歩合給
・スタッフ側が社会保険に加入したくない
という3要素が揃ってしまうと
社会保険逃れとして摘発するのは、
かなり難しくなります。
さて。
今回の話を聞いて、
「取り締まれない社会保険逃れなら
自社でもやってみよう!」
なんて人はいないとは思いますが、
念のため最後に警告を。
そういう方に知っておいてほしいのは、
「こういったグレー(ブラック)なスキームは、
会社側ではコントロールできない『外的要因』
によって簡単に崩れる」
ということです。
それがなぜかというと、
「元味方」が最大のリスクになるからです。
たとえば、今回のスキームについても
「スタッフとの関係性が良好で、
スタッフの気持ちが変わらない」
というかなり不安定な前提条件に
よって成り立っていました。
つまり、このスキームが
成立しているのは、
「仕組そのもの」ではなく
「人間関係」によるもの
だということです。
ですが、もし、
そのスタッフとの関係が悪くなったり、
退職して関係が希薄になっていったら
どうでしょうか?
今回のケースで、
もし、社員がこの会社に対して
本気で損害を与えようと思えば、
・本当の出勤簿を出してきて、
未払残業代を請求する
・社会保険を2年前から遡って
加入させる
・何なら他のスタッフの事実も暴露して、
全スタッフの社会保険加入をさせる
なんてことも可能です。
スタッフの成績が良くて
高い給与をもらっている間は
結果的に問題が発生しないかも
しれません。
ですが、会社のせいではないにしても、
・業界的な厳しさで売上が厳しくなった
・スタッフ側の問題でだんだんと成績が
落ちて給与が下がってきた
といったことが起きれば、
自分を守るために何らかの行動に移る
スタッフも出てくるかもしれません。
そして、これらのことは
完全に会社側でコントロールすることは
できない領域になります。
だからこそ、
もし、安易な社会保険料逃れに
手を出しそうになったら、
「そんなリスクを抱えてまで
社会保険を回避したいのか?」
これをぜひ自分の胸に聞いてみてください。
裏ワザ的なことをしなくても
コストを削減する方法は
たくさん存在します。
そういった表のワザを使いこなさずに
「バレたらアウト」の領域に踏み込むのは
経営をリスクに晒すだけってことです。
桐生 将人

