マネジメント

前科がある人を雇用できますか?

※本ブログは桐生が過去にメルマガで配信した

内容を再編集して投稿しております。

 

こんにちは。

桐生です。

 

あなたのもとに

求人応募がありました。

 

まずは書類選考をするために

履歴書を送ってもらったところ、

賞罰の欄に「◯◯罪 罰金刑 終了」

の文言が、、、。

 

さて、あなたなら

どうしますか?

 

『前科があっても気にしない!

今は罪も償ってるからね!』

 

そういう方もいるでしょう。

 

ただ、本音を言えば、

少し採用に躊躇してしまう方も

多いかもしれません。

 

ですが、この応募者は

ある意味”まとも”です。

 

というのも、

自分から前科があることを

告白してくれているからです。

 

だから、会社側としても、

「それもふまえて判断する」

という選択肢が生まれます。

 

ですが、実際の労務の現場では

こんなことはほとんど起きません。

 

どういうことかというと、

「前科がある人の多くは、

前科があることを言うことなく

求人応募してくる」

ということです。

 

もちろん前科があることだけを

もって不採用にすることは、

労基法に抵触する可能性があります。

 

ただ、それを知らずに採用することは、

会社にとって大きなリスクになる可能性も

あります。

 

たとえば、実際にあった事例として、

こんな話がありました。

 

///////////

・既存のスタッフからの報告により、

採用していたスタッフに傷害罪の

前科があったことが判明した

・既存のスタッフたちの多くは

地元のニュース等でその事実を

知っていたため、女性スタッフを

中心に「関わるのが怖い」という

相談を受けた

・会社はすぐに事実確認のため、

ネット検索をしたが、事件の記事は

出るものの個人名での特定ができず、

対処に難航した

・結果として、そのスタッフを理由に

複数名のスタッフが退職を申し出た

///////////

 

このケースにおいても、

たとえば、前科の内容を知っていれば、

・最初の頃は、他のスタッフと関わらない

業務を担当してもらう

・他の男性のスタッフとペアを組ませる

・短めの有期雇用からスタートして、

本人の勤務態度や他のスタッフへの

影響で更新を判断する

といった対策ができたかもしれません。

 

ですが、このケースにおいても、

「前科を事前に把握できなかった」

ことで既存スタッフの退職という

最悪の事態へと発展してしまいました。

 

こういったことにならないためにも

「前科を事前に把握する」ということは

採用において重要です。

 

では、

「前科は把握できるのか?」

というと、、、

 

実は、これが結構難しいのです。

 

前科に関しては、個人情報になるので、

警察に聞いても教えてくれません。

 

その他に頼れるものは「ネット情報」

になりますが、これも個人名が出てくる

可能性はかなり低いです。

 

かなり大きい事件になれば別の話ですが、

罰金刑レベル(窃盗、傷害、痴漢等)のもので

個人名が公表されているケースは少ないです。

 

なので、

「会社側で勝手に調べるのは難しい」

と思っておいた方が良いです。

 

では、どうするかというと、

1)本人に申告してもらう

2)虚偽申告の場合の対策をする

という方法を取ります。

 

まず、やるべきは

「本人に申告してもらう」

ということです。

 

採用面接の際に、

会社が前科を聞くことは

禁止されていません。

 

なので、まずは

「前科がある場合は教えてください」

と口頭で質問するか、

別途、誓約書等で

「前科がある場合は申し出ること」

といった形で書面で確認すると

良いです。

 

ちなみにオススメは書面です。

 

その理由は

「2)虚偽申告の場合の対策をする」

に繋がるからです。

 

前科があることを質問しても

相手が虚偽の回答をすることが

あります。

 

そして、虚偽の回答をされた場合、

正直なところ、会社側がその真偽を

調べるのはかなり難しいです。

 

実は、紹介した事例についても、

会社側は前科に関する質問をしていて、

相手から「前科はない」という回答を

されていました。

 

その後に、複数のスタッフからの報告で

「前科があったこと」が発覚しましたが、

それを第三者的に証明することができず、

他のスタッフが退職を申し出るような

状況に発展してしまいました。

 

→警察も教えてくれないし、

ネット記事にも個人名は出てこないため

 

だから、もし、

虚偽の申告だという疑義が生じた場合に、

それに対処できる準備をしておくことが

重要になってきます。

 

ここでポイントになってくるのが、

「誓約書」です。

 

結局、第三者的に証明できない以上、

その真偽は本人にヒアリングするしか

ありません。

 

ですが、前科は個人情報になるので、

本人にそれを確認するためには

“正当な理由”が必要になります。

 

その”正当な理由”こそが、

「誓約した事項の事実確認」

というものです。

 

誓約書において、

「前科はない」ということを

申し出ておきながら、

事実とは違うことが発覚したら

それは懲戒処分の対象となる

わけです。

 

だから、その事実確認をするのは、

会社として正当な理由になるという

ことですね。

 

ということで、まとめ。

 

会社が「前科」についてのリスクを

おさえるためにやるべきことは、

・まずは本人に直接聞くこと

・誓約書にその内容を残しておくこと

(誓約書違反は懲戒になることも

定めておくこと)

ということです。

 

ちなみに…

 

この事実確認においても否定された場合は、

これ以上対処するのは難しいと言えます。

 

とはいえ、会社が何も対処しないと、

紹介したケースのように、他のスタッフへの

影響が生じる可能性もあります。

 

こういったリスクまでカバーするなら、

「入社時はしばらく有期雇用で様子を見る」

ということがベストな選択だと考えています。

 

入社から無期雇用にしている場合、

今回のように事実確認ができないと

「大した理由のない解雇」という

かなりハードルの高い手段を取ることに

なってしまいますからね。

 

とはいえ、現在の求人は

売り手市場の状況です。

 

「有期雇用の募集では求人が集まらない」

という会社もあるかと思います。

 

どこまでリスクを負うかは経営判断に

なりますが、、、

 

誤った経営判断をしないためにも、

「リスクをしっかり把握すること」

が重要だと考えています。

 

桐生はこれからも、

クライアントの顔を思い浮かべながら、

ニッチなリスク情報まで突き詰めて

いきたいと思っています^^

 

桐生 将人