※本ブログは桐生が過去にメルマガで配信した
内容を再編集して投稿しております。
こんにちは。
桐生です。
「お客さまが本当に欲しいものを
販売すれば買ってもらえる」
これは論理的には完全に正しいです。
本当に欲しいものなのだから、
「お金がない」等のその他の要素が
入りこまない限り買ってくれるはずです。
ですが、先日のブログを読んでいる
あなたならわかるはず。
「お客さまは本当に欲しいものでも
買ってくれないことがある」
ということを。
たとえば、一つの例をあげます。
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時代は変わり、1960年代後半には
カラーテレビ、エアコン、自動車の
耐久消費財3品目が「新・3種の神器」
と喧伝されました。
こちらの普及率は「旧・3種の神器」ほど
ではありませんが徐々に浸透していき、
20年かけて50%を超え、30年かけて70%を
超えていきました。
この時代の消費者の間には「もっと家事
(洗濯、食事)を楽にこなしたい」
「もっと快適に過ごしたい」とする明確な
ニーズがありました。
そのため商品開発においては
「何をつくればいいか」はわりと明確であり、
あとは商品に競争力を持たせるため、
いかに各部品のコストを安く抑えるか、
いかに大量生産するかが企業の勝負を
分ける時代でした。
(中略)
一方、明確なニーズがあって、
困っている人がいるのに、
なかなか世の中に浸透しない耐久消費財の
代表格が「食洗機」です。
(中略)
食器を洗う手間を自動化してくれるのですから、
圧倒的に「楽」になるのは間違いないと思うのですが、
なぜかいまいち普及しないのです。
―引用(pp.147-149):『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』著:松本 健太郎、出版:毎日新聞出版 (2020/7/11)
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さて、お客さまが欲しいはずの
食洗機が買ってもらえないのはなぜか?
なんとなく想像はつきますよね。
そうです。
・自分で洗うことができるから
贅沢品のイメージが強い
・欲しいとは思っているけど、
家族や姑が嫌がりそう
こんな話です。
嫁姑問題でいえば、
“食洗機を使わない”ことは、
色んなことを省力化することを
よく思っていない姑に対する
最後の砦なのかもしれません。
似たような話で、
忙しいお母さんが子どものお弁当に
1品だけでも手作りのおかずをいれよう
とするという話があります。
本来はおかずは冷凍食品だけにして
ごはんを詰めて終わりにしたいわけですが、
『冷凍食品ばかりだと子どもに申し訳ない』
と思って、1品だけでも手作り食材を入れよう
とするお母さんが多いようです。
これらの話に共通する根源的な感情は
いわゆる「罪悪感」です。
・お義母さんも手荒れを気にしながら
皿洗いをしてきたのに、自分が食洗機で
楽をしたら悪いよね…
・皿洗いなんて大した労力じゃないから、
がんばって稼いできてくれたお金を
自分の楽のために使うなんて申し訳ない…
・冷凍食品ばかりのお弁当で楽していたら
子どもに申し訳ないよね…
こんな話です。
つまり、「楽になる(=欲しい)」という
ことはわかっていても、買うことができない
ということです。
では、ここまでの話をふまえて、
お客さまに欲しいものを買ってもらう
ためにはどうすれば良いか?
それは、
「お客さまの商品に対する
認識を変えること」
です。
たとえば、食洗機を買えない主婦は、
「食洗機は皿洗いをサボるもの」
だと認識しているわけです。
ですが、別の見方をすれば、
「テクノロジーを活用した
賢く時間を生み出す方法」
とも言えます。
現在、多くの人は銀行振込に
ネットバンキングを活用している
と思います。
わざわざ銀行の営業時間内に
窓口に駆け込んで、順番待ちを
して振込作業をするとしたら、
「ネットバンキングを使って、
もっとスマートに振込をしたら?」
と教えてあげたくなると思います。
それと同じことで、
食洗機を使うことを罪悪感に
結びつけるのではなく、
“賢い選択”というポジティブな
認識へと結びつけられるように
誘導してあげるということです。
もし、あなたが価値のあるサービスを
提供しているのに売れないとしたら…
それは商品自体を改善するのではなく、
「お客さまの認識」を変える必要が
あるのかもしれません。
あなたの商品がお客さまにとって
どう認識されているか?
そこに着目してみてください。
桐生 将人
―参考図書:『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』著:松本 健太郎、出版:毎日新聞出版 (2020/7/11)