人事労務

助成金にあなたの常識が通用しない理由

こんにちは。

桐生将人(きりゅうまさと)です。

 

コロナショック下においては

もっぱら「雇用調整助成金」が

注目されています。

 

ですが、この環境下でも調子の良い

会社が存在するのも事実です。

 

そういった会社では相変わらず

「キャリアアップ助成金」を

定期的に活用しています。

 

「キャリアアップ助成金」は

説明不要の有名な助成金かも

しれません。

 

簡単に言えば、

 

・有期契約で6ヶ月雇う

・正社員転換して5%昇給する

・正社員として6ヶ月雇う

 

とすることで1人あたり57万円を

もらえる助成金です。

 

よくあるパターンとしては、

 

・新入社員を6ヶ月契約で採用

・その後に正社員転換して5%昇給

・入社からちょうど1年経った頃に

助成金申請

 

というものが多いです。

 

なので、調子が良くて、社員が増えて

いる会社の多くは、定期的にこの助成金を

申請しています。

 

この助成金は、比較的、条件も

わかりやすく簡単なので、

特殊な雇用形態の会社でなければ

不支給になることはほとんどありません。

 

ですが、先日、久々に不支給の

決定が出てしまいました…。

(かなり交渉したのですがダメでした)

 

ということで、今回は

その内容をシェアしたいと思います。

 

では、早速質問です。

 

以下のどちらが好条件だと思いますか?

 

<前 提>

入社時 :契約社員として6ヶ月契約

労働時間160時間+残業20時間

月給20万円

 

この契約社員が6ヶ月後に以下のパターンの

いずれかの条件で正社員転換したとします。

 

<パターン1>

正社員転換後:労働時間160時間+残業25時間

月給21万円(約5%アップ)

 

<パターン2>

正社員転換後:労働時間約100時間(社員の裁量)

時給だが月の給与は50万円以上

 

どうでしょう?

 

普通に考えれば、

パターン2の方が好条件に

感じませんか?

 

ですが、実は助成金が通りやすいのは、

パターン1で、むしろパターン2だと

助成金不支給となる可能性が高いです。

(今回の桐生のケースは、まさに

パターン2で不支給となりました)

 

これを聞くと常識的に考えて

おかしいと思いませんか?

 

なぜなら、助成金を管轄している

厚生労働省は、あれだけ残業時間を

抑制して生産性を向上しろとか

働き方改革とかを謳っているわけです。

 

パターン2は、

 

・社員の労働時間を減らして

・社員の労働時間の裁量を増やして

・社員の給与を2倍以上に増やして

・社員に正社員待遇を適用している

 

わけです。

 

それと比べて、パターン1は、

 

・社員の労働時間は増えて

・社員の労働時間の裁量はなく

・社員の給与は東京の最低賃金ぎりぎりを

助成金対象ぎりぎりの5%昇給して

・正社員待遇をカタチ上適用した

 

だけです。

 

それなのに、現実は、パターン2だと

助成金が出なかったということです。

 

交渉の中で、助成金センターの事務の

方と色々と話したのですが、、、

 

その方はこんなことを話していました。

 

「おっしゃっていることは非常によく

わかります。ですが、助成金の条件に

該当するかが最も重要なのです。」

 

で、今回の話で最も重要なポイントは

この言葉の中にあります。

 

以前に補助金の話をしたときに、

助成金や補助金には

「外してはならないポイントがある」

とお伝えしました。

 

助成金にとっての「外してはならないポイント」は

“ここ”にあったということです。

 

つまり、どんなに社員にとって

優遇した措置を取ったとしても、

助成金の要件にピッタリ当てはまる

ようにしないと助成金は通らない

ということです。

 

一見すると当たり前に聞こえるかも

しれません。

 

ですが、実務の中で色んなケースを

見ていくと、一般常識と相当のズレが

あると感じることが多々あります。

 

たとえば、今回の2つのパターンに

戻ってみます。

 

今回、パターン2が不支給になって

しまった理由は「正社員の定義」に

ありました。

 

この会社は、正社員の定義を

1日8時間、週40時間の月160時間で

働かせることとしていました。

 

ですが、パターン2にしたことで、

社員は自分の裁量で働くようになり、

結果的に月の労働時間は100時間程度

になりました。

(しかも給料は2倍以上になっています)

 

これを助成金の審査部門は

どう判断したか?

 

「素晴らしい取り組みですね!」

 

と褒めるどころか、、、

 

「正社員よりも労働日数や労働時間が

少ないので正社員になったとは認められない」

 

と判断したということです。

 

つまり、もし、この会社が、

給与の昇給をケチって、

労働時間を長いままにして、

社員の裁量を認めない形に

していれば(つまりパターン1)

普通に助成金はもらえていた※

ということです。

 

※その証拠に、実際に同じ会社で

パターン1で正社員化した社員は

助成金を普通に受給できています。

 

一般常識で考えれば、

社員にとってメリットが大きいことを

したのはパターン2です。

 

厚生労働省の趣旨に沿っているのも

パターン2です。

 

だから、パターン2の方が助成金は

対象になりそうですよね?

 

ですが、”助成金の世界の常識”に

一般常識は通用しないということです。

 

“助成金の世界の常識”で重要なのは、

いかに社員にメリットがあるかではなく、

いかに条件にしっかりと適合しているか

そしてそれがわかりやすく適合しているか

ということです。

 

論理的に考える人や趣旨・目的から

考える人ほど、この歪んだ常識に

惑わされやすいかもしれません。

 

ですが、助成金を取りたいなら、

とにかく条件に適合させることに

一点集中するようにしてください。

 

どんなに社員の待遇を良くしても、

条件の適合に疑義が生じると

助成金が不支給になることがあります。

 

ということで、

助成金を考える際は、

あなたの常識は捨てて、

“助成金の世界の常識”だけで

考えてくださいね!

 

桐生にとってもこの不支給は、

良い勉強になりました…^^;

 

桐生 将人