MENSA社労士の視点

【社会保険 調査】交通費の立替精算を否認される会社の特徴

こんにちは。

桐生です。

 

交通費の立替精算が否認されて、

社会保険料を2年分まとめて請求される

ことがあります。

 

しかも、これは珍しいケースでは

ありません。

 

「うちは精算書もちゃんと

作っているから大丈夫だ」

 

そんな方も多いかもしれません。

 

ですが、社労士として11年以上

現場を見てきた経験から言うと、

このケースについては、

「確信犯的なもの」だけでなく、

「知らず識らずのうちに法を

踏み外してしまっている」

という会社も多いです。

 

そこで、今日は、

あなたが”予期せぬ社会保険料の追徴”を

受けないために、

「交通費の立替精算を否認されやすい

会社の特徴とその対策」

について解説していきます。

 

まずは、実際にあったケースです。

 

ある会社にこんな通知が来ました。

 

「社会保険料を2年遡って再計算してください」

「社員の方にも追加徴収が発生します」

 

再計算となった指導内容は、

「交通費として立替精算していたものを

給与に合算して再計算しなさい」

というものでした。

 

結果として、この経営者は、

・過去2年に遡って社会保険料を追加で

支払うことになった

・社員に対しても追加徴収が生じたので

社員への謝罪と個別対応を行うことに

なった

・分割徴収の相談に応じることになり、

事務的な手間が発生した

というトリプルパンチを受けることに

なりました。

 

では、なぜこんなことになったのか?

 

結論はシンプルで、

「交通費ではなく通勤手当と判断された」

ということです。

 

ここで一番重要なのは、

社会保険は”名目”ではなく”実態”で見る

ということです。

 

実はこの会社、

何をしていたかというと、

スタッフの通勤定期代を

「通勤手当」として支払うのではなく、

「立替精算」として処理していたのです。

 

その社長に悪気があったわけではありません。

 

その会社では、

「社員から通勤定期の領収書を提出して

もらって、その金額を支払う」

という業務フローだったので、

当たり前のように「立替精算」として

処理をしていたものでした。

 

ですが、これは社会保険的には

大きな違いがあります。

 

というのも、

「通勤手当」は社会保険料の対象ですが、

「立替精算」は社会保険料の対象外と

なるからです。

 

つまり、この社長は、

実態としては「通勤手当」だったものを

名目上「交通費」として処理してしまい、

悪気がなかったとしても、結果だけ見れば

「社会保険料を過少に支払っていた」

ということです。

 

この問題は、今回の実例のように

「明らかに間違っている会社」だけに

起きる話ではありません。

 

「交通費を立替精算している会社」なら、

どこでも起こりうるものです。

 

繰り返しになりますが、

通勤手当か交通費かというところは

“名目”ではなく”実態”で判断されます。

 

つまり、会社としては

「業務交通費として立替精算をしている」

というつもりでも、調査では

「実態としては通勤手当」と判断される

ケースがあるということです。

 

特に調査で疑義が出やすいのが、

・通勤手当が発生していない

・毎月固定額を精算している

・通常の勤務地の定めがない

・直行直帰が多い

といった会社です。

 

この場合に

『通勤手当を交通費として

処理してしまっているのではないか?』

『勤務地の中に実態として通勤に

なっているものがあるのではないか?』

ということを確認されやすくなります。

 

つまり、年金事務所の調査において

「実態として通勤手当かどうか」

を見られることになるということです。

 

では、どうすれば

業務交通費の立替精算を否認されて、

通勤手当認定されるリスクを下げる

ことができるのか?

 

まずやるべきは、

会社における「通勤」と「業務上の移動」

の定義と実態を説明できる資料を用意して

おくことです。

 

具体的には、

・労働契約書に「通常の勤務地」を定めておく

・就業規則に「直行直帰」や「出張」の業務が

あることを明記する

・その都度、勤務地を指示したことを証明する

「勤務地指示書」を保管しておく

といったことが挙げられます。

 

これらによって、

会社としての「通勤」と「業務上の移動」

の違いを明確にして、実態を証明できる

ようにしておくことが重要です。

 

次に、もう一歩踏み込んだ対策としては、

「無理やり全部を立替精算にするな」

ということです。

 

実態として「通勤」とみなされやすい

ポイントとしては、

・固定的な現場に長期に直行直帰をしている

・本社への出社実態がほぼない

というものが挙げられます。

 

こういった場合、

「実態としては自宅から現場の移動が通勤である」

と認定されるリスクが大きくなります。

 

とはいえ、

「ほぼ毎日どこかの現場に行く」

という会社もあると思います。

 

それであれば、

・固定化されている勤務地の一つを通勤

として定めて「通勤手当」で支払う

・それ以外は変動的な勤務地として

「業務交通費」として立替精算する

という運用が考えられます。

 

すべてを立替精算していた会社であれば、

社会保険料がコストアップする可能性も

あるかもしれません。

 

ですが、一部の交通費を通勤手当にしても

社会保険料の等級が上がらないかもしれませんし、

少なくとも「いきなりすべてを否認される」

というリスクを下げることができます。

 

ただし、ここに関しては、

どの勤務地への移動を通勤とするかを

会社の規程や勤務実態から総合的に

判断する必要があります。

 

特に、この対策を検討するときは、

「社会保険料の等級が上がらない

交通費の分だけ通勤手当にしよう」

なんてことは考えないことです。

 

あくまでも、

・会社の規定

・勤務実態

から判断しないと、

余計に調査のリスクを上昇させる

ことになりかねません。

 

最後にまとめです。

 

今回の話は、

・交通費の立替精算が否認されて

2年前に遡って社会保険料を追徴

されるケースは珍しくない

・特に、固定的な立替精算や

直行直帰が多い会社は要注意

・会社としての「通勤」と「業務上の移動」の

定義を証明できる資料が重要

・不安な場合は「あえて一部を通勤手当にする」

ことを検討する

です。

 

もし、交通費を立替精算しているという

経営者の方は、一度、自社の書面と実態を

確認してみてください。

 

桐生 将人