MENSA社労士の視点

退職届の提出を待つ。その常識がトラブルを生む理由

こんにちは。

桐生です。

 

LINEで「退職します」と連絡が来たら、

あなたはどう返信しますか?

 

あ…念のためにお伝えすると、

これは「退職を撤回させるため」

という話ではありません。

 

「その後にトラブルを

起こさないために

どう返信しますか?」

ということです。

 

この質問をすると、

多くの経営者の方が、

「まずは退職届(退職願)を

提出してくださいと返信する」

と答えます。

 

もちろん、

それは間違いではないのですが…

 

実は、最近、

“その返信”をしてから

提出を待ち続けることによって、

結果的に会社のリスクが

大きくなってしまうケースが

増えています。

 

では、なぜ、

LINEの退職申し出に対して

「退職届を提出してください」

と返信して、

その提出を待つことが

逆にリスクを高めてしまうのか?

 

それは、

「待っても待っても

退職届が提出されない」

ことによって、

退職の意思や退職日が

曖昧になってしまうことが

あるからです。

 

そのリスクを説明するうえで、

まずは、そもそも、

「なぜ、退職届をもらうのか?」

ということについて理解する

必要があります。

 

桐生自身、実際に

経営者の方にこの質問を

することがあるのですが、

あまり明確な回答が返って

こないことが多いです。

 

というのも、

話を聞いていると、

ほとんどの経営者の方が、

過去の慣習や経験から

「退職するなら

退職届を書いてもらうものだ」

と考えているだけだからです。

 

では、改めて、

「退職届の目的」

とは何か?

 

それは、

・退職の意思

・退職日

の事実を証拠化する

ということです。

 

そもそも、

LINEで連絡があった時点では、

「退職の申し出があった」

というものでしかありません。

 

つまり、もし、

退職届がなければ、

退職の意思、退職日、

申し出の趣旨等について、

後から認識の齟齬が生じる

可能性があります。

 

さらにいえば、

退職日すら曖昧な状態で

音信不通になってしまうと、

退職の手続きを進めることすら

難しくなります。

 

そういった認識の相違を防ぐために

「退職届を提出させる」

ということをしているわけです。

 

つまり、本質は

「提出させること」

ではなく、

「証拠を残すこと」

にあります。

 

だからこそ、

退職届にこだわって、

「提出されないことで

証拠が残らない」

となってしまったら

本末転倒だということです。

 

そして、桐生の経験上、

LINEで申し出てくる社員が、

改めて書面で退職届を提出してくれる

ケースはそう多くありません。

 

というのも、

いきなりLINEで「退職します」

なんて内容が送られてきている時点で

会社と社員の関係は良い状態とは

言えないからです。

 

結果として、

 

LINEで退職の連絡が来る

退職届を提出するように返信する

いつまで経っても退職届が出てこない

 

というケースが非常に多いのです。

 

とはいえ、

『退職届は出てこなくても

普通に退職の処理を進めれば

いいのでは?』

と思うかもしれません。

 

ですが、

この「証拠のない退職処理」が、

会社にとってのリスクになります。

 

たとえば、

LINEの申し出の後に

社員が音信不通となってしまい、

会社が勝手に退職手続きを

進めていたとします。

 

そんなときに、

急に社員から連絡があって

こんなことを言われたら

どうでしょう?

 

『退職の申し出なんてしていません。

勝手に退職処理をしたってことは

解雇ってことですよね?』

 

自分から申し出ていたはずなのに、

「解雇だ」と主張されるわけです。

 

そして、再度LINEを見たところ、

「メッセージの送信を取り消しました」

と書いてあったら…

 

笑えない話です。

 

つまり、

LINEやチャットツールが

当たり前に使われるようになった

現在のビジネス環境において、

「退職届という書面を待ち続ける」

という行為は、

「現在ある証拠を失うリスクに繋がる」

と言えるわけです。

 

では、どうすれば良いのか?

 

それは、

「退職届の提出を求める」

にこだわらず、

「今ある証拠を保存する」

ということです。

 

たとえば、先の事例で言えば、

「会社もLINEで退職日と申出内容に

ついての認識を返信したうえで、

スクリーンショットで画面を保存する」

という方法があります。

 

『え?書面じゃなくていいの?』

と思うかもしれませんが、

法的には退職の申し出や承諾は

「書面」である必要はありません。

 

もちろん、書面でもらえるなら

それに越したことはありません。

 

ですが、

無理に書面にこだわることで

退職後のトラブルリスクを

高めてしまうのなら、

サクッとLINEで返信して

証拠を残す方が後々のトラブルを

防げる可能性が高いということです。

 

今回の話で重要なのは、

これが

「退職届だけの話ではない」

ということです。

 

実際、

経営者の方と話していると、

本来やらなくてもいいものを

“やらなければならないもの”

と勘違いしているケースは

少なくないです。

 

そうなってしまうのは、

人が、

目的を達成するための

「手段」

を繰り返しているうちに、

いつの間にか

「その手段自体が目的」

だと思い込んでしまうからです。

 

今回の

「証拠を保存する」

ではなく、

「退職届をもらう」

ことにフォーカスして

しまっているのは、

まさにこれと同じことです。

 

だからこそ、

経営者に重要なのは、

「目的にフォーカスする。

その後に最適な手段を選ぶ。」

という順序を間違えないことです。

 

あなたの業務の中で、

手段が目的化しているものは

ありませんか?

 

「なぜ、その手段を取っているか」

を見つめ直すと、今の環境における

最適な手段が見えてきます。

 

桐生 将人